悪性胸膜中皮腫および胸腺腫瘍
あくせいきょうまくちゅうひしゅおよびきょうせんしゅよう
悪性胸膜中皮腫について
疾患の説明
悪性胸膜中皮腫は、胸の内側や肺の表面を覆う胸膜を作っている細胞からできる、まれながんです。胸膜は、肺の表面を包む薄い膜(食べ物を包むラップのようなもの)ですが、がんになると厚くなります。
発症の主な原因はアスベスト(石綿)という建材などに使われた物質を長く吸い込むことです。患者さんの約9割以上にアスベストばく露の経験があります。日本では2006年にアスベストの使用が全て禁止されましたが、ばく露から発症までは30~40年かかることが多いので、今後しばらく患者さんが増えると考えられています。
症状
初期は症状のないことがほとんどで、健康診断の胸のレントゲンで「胸水」(肺と胸壁の間に水がたまる状態)が見つかって気づくことが多いです。この「胸水」が初めの症状として最も多く、進むと胸が苦しくなったり息切れしやすくなります。進行すると次のような症状が現れることがあります
- 胸や背中の痛み(がんが胸の壁に広がった場合)
- 咳
- 息苦しさや胸の苦しさ
- 原因がはっきりしない発熱
- やせる(体重減少)
これらの症状は他の病気でも起こるため、早めに見つけるのが難しいがんです。
診断
まずレントゲンやCTといった画像検査で異常を見つけますが、それだけではこの病気と決まったわけではありません。確定診断のためには、胸に針を刺して胸水や胸膜の組織を取り出し、顕微鏡でがん細胞を調べる(=病理診断)が必要です。もし検査が難しい場所にがんがある場合は、外科の先生に手術で組織を取ってもらうこともあります。また、このがんは肺以外の場所にも広がるため、全身を調べてどこまで広がっているかも確認します。
治療
治療には「手術」「抗がん剤(薬による治療)」「放射線治療」の3つの方法があります。多くの場合、見つかった時には進行しているので、まず抗がん剤や放射線でがんの進行や症状を抑えることを目指します。
初期でがんが広がっていなければ手術も考えられますが、体力や病気の進み具合によっては難しいことも多いです。最近では新しい種類の薬(免疫チェックポイント阻害薬など)も使われており、治療の選択肢が増えてきています。
息苦しさや痛みを和らげる治療(緩和ケア)もとても大切です。治療方針は、患者さんやご家族の気持ちを大事にしながら、専門医のチームと相談して一緒に決めていきます。
不安なことは一人で悩まず、医療スタッフやサポート団体にぜひ相談してください。治療法は進歩していますので、分からないことや新しい治療についても気軽に尋ねてください。
医療関係者の方へ
当院ではアスベスト外来があり、アスベストばく露歴がある方のご相談や治療も積極的に行っています。対応に迷われる症例がありましたらご相談いただけると幸いです。
胸腺腫瘍について
疾患の説明
胸腺腫瘍は、胸の中央(心臓の前あたり)にある「胸腺」という免疫に重要な働きをする臓器から発生する腫瘍で、「胸腺腫」と「胸腺がん」の2つに分かれます。胸腺は体を守る細胞(T細胞)を育てる役割もあります。
胸腺腫瘍は珍しい病気ですが、胸の真ん中にできる腫瘍の中では一番多いタイプです。胸腺腫は40~70歳で多くみられますが、胸腺がんは年齢を問わず発症します。
症状
胸腺腫瘍は半分くらいの方が症状のないうちに見つかります。症状が出る場合としては、以下のようなものがあります
- 腫瘍が大きくなって周りを押すことで胸が痛い、苦しい
- 咳
- 息切れ
- 胸に圧迫感がある
特徴的な合併症としては、筋肉が動きにくくなる「重症筋無力症」という病気があり、胸腺腫の3~5割で合併します。まぶたが下がる、物が二重に見える、手足や全身の筋力が落ちる、うまく飲み込めなくなる、話しづらい、夕方に悪化するなどの症状があります。また、血液の中の免疫成分が減る病気(低ガンマグロブリン血症)や筋肉に炎症が起きる病気(多発筋炎)を合併することもあります。
診断
診断にはレントゲンやCTで影を見つけた上で、確定には腫瘍の一部を採取する「組織検査(生検)」が必要です。腫瘍が大きくなっている、他の臓器に広がっている場合は手術で腫瘍を取ることが第一選択になります。
治療
治療の中心は手術で、早めに見つかれば手術だけで治る場合も多いです。腫瘍が広がっていたり、周囲の臓器に及んでいる場合は放射線や抗がん剤も追加して治療します。
医療関係者の方へ
当院は胸部外科があるため腫瘍の摘出が可能です。また、神経内科や血液内科もあるため、重症筋無力症や他合併症にも院内で対応しています。患者さんの治療で迷うときはご相談ください。